シャドーイングって本当に効果あるの?

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リスニングのトレーニングの一つにシャドーイングというものがあります。こぐまEnglishでは多くの方のカリキュラムにシャドーイングを導入しています。そこで今回はシャドーイングはどのようなメカニズムで機能するのかについてお話ししていきたいと思います。


・リスニングのメカニズム

前回、海外ドラマの視聴についての記事の中でも触れましたがリスニングは以下の2つのステップで成り立っています。

① Sound Perception:聞こえた音声から単語を特定するステップ
② Comprehension:特定した単語の羅列から意味を理解するステップ


そして、シャドーイングには2つの種類があります。

プロソディシャドーイング:英語の音声を聴きながら、真似して発音してして追いかけていく
コンテンツシャドーイング:英語の音声を聴きながら、意味も理解しながら発音して追いかけていく


こぐまEnglishではステップを分解して、各スキル別にトレーニングを割り当てるやり方をとっているためSound Perceptionの強化のためにプロソディシャドーイングを用いることが多いです。実際に日本人英語学習者がリスニングにおいて抱えている弱点は、このSound Perceptionにあることがほとんどです。

さらにSound Perceptionで発生し得る課題をさらに分解すると以下の要素に分けられます。

① 聞こえた音声から単語を正確に特定できない
② 脳の音声処理速度が遅く、キャパシティーオーバー(脳がフリーズ状態になる)になってしまう

これら2つの課題を克服するのにシャドーイングは非常に効果的なトレーニングだと言われています。その理由についてさらにお話ししていきます。

・シャドーイングが良い理由①:音声のみに意識を集中させるので音の変化にフォーカスしやすい

プロソディシャドーイングでは意味の理解は完全に無視して進めていきます。
そのため、「音声を聞く→音から単語を特定する→発音する」というプロセスのみに内容を限定することで英語特有の音声変化を正確に捉える能力を向上させ易くなります。

ここで英語の音声変化について少し補足しておきます。
英語には以下のような音声変化がよく発生します。これらは英語に慣れていない学習者を苦しめる要注意ポイントですのでよーく覚えておきましょう!

  1. 単語間の「子音+母音」が連結して発音される
    例)This is an apple.(ディスィザナポォ)

  2. 省略される音声がある(t, d, k, g, p, bなど)
    例)good night(グッナイ)

  3. tがd音で発音される(主にアメリカ英語)
    例)letter(レダー)、water(ワーダー)

  4. 機能語(代名詞、前置詞、接続詞、冠詞、助動詞)は弱形で発音されることがある
    例)and(エン)、him(イm)

音声認識に課題がある方の多くが上記の音声変化を正確に捉えることができないことが原因であることがほとんどです。

・シャドーイングが良い理由②:脳のワーキングメモリの強化に効果的

人間の脳は短期的な記憶や情報の処理をするための領域(ワーキングメモリ)を脳の中に持っています。
通常、母国語では音声認識は自動化されているため、行っていることすら感じることができません。
しかし外国語の場合は、音声認識の情報処理パフォーマンスが高くないためリスニングプロセスのボトルネックになることが多いのです。
すなわち、英語をリスニングする際にこのワーキングメモリの情報処理のスピードが遅いと速い音声に追いつけずドロップアウトしてしまう訳です。

シャドーイングでは、英語音声を聞いてからそれを真似して発音していきます。
さらに自分が発音している間にも、音声がどんどん先に進んでいきます。その音声を短期記憶として保持しながらさらに次に入ってくる情報を処理する、という非常に負荷の高いトレーニングなのです。そのため、一般的にリスニングの練習としてよく挙げられるディクテーションやリピーティングなどに比べると非常に効率的に音声認識力をアップさせることができます。


ただし、全ての方にシャドーイングがおすすめできる訳ではありません。レベル別におすすめのトレーニングを方法をまとめると以下のようになります。

【初級者の方へのおすすめ】
フォニックスを学び、まずは英語の音英データベースを構築しましょう。
※フォニックスとは各アルファベットに対応した実際の発音のことです。

▼おすすめのYouTubeチャンネル
あいうえフォニックス
Phonics TV - 英語の発音をフォニックスで学ぼう

【中級者の方】
リピーティングを行なってからシャドーイングにシフトしてみましょう。

※リピーティングとは、「1センテンスの音声を再生・一時停止して、その音声を真似して発音する」というシャドーイングのショートバージョンのようなトレーニングです。短期記憶として保持する情報が少ないため無理なく始められます。


【上級者の方】
シャドーイングをメインのトレーニングとして活用していきましょう。

ご自身に合ったトレーニングで効率的にリスニング力をアップさせていきましょう!
なお、今回お話しした内容に関する動画をYouTubeにもアップしてありますので、こちらもご覧下さい。それでは今回はここまでです。次回もお楽しみに♪


Kenichi Ariga