知らないと損する海外ドラマ視聴の活用方法!「リスニングに効果あり」は間違っていた?

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よく相談される内容で多いものの一つに、「海外ドラマや映画の視聴は英語リスニング力アップに効果的ですか?」という質問があります。みなさんはどう思いますか?

まず結論からお伝えすると「No」です。

誤解がないようにお伝えすると、ネイティブスピーカーの自然な言い回しや海外の文化を学ぶなどの目的で視聴することはむしろとても効果的だと考えています。しかし、もしあなたがリスニング力アップのためだけに海外ドラマ視聴しているとしたらおすすめしません。


まず理解しておくべきなのは、人間は外から得る情報のうち8〜9割は目から入ってくる視覚情報が占めると言うことです。言い換えると海外ドラマ視聴時に、みなさんの意識の大部分は映像に集中することになります。

そのため英語を聞き取れたつもりになっていても、実際は映像によって情報を補完している場合がほとんどです。流暢な英語に慣れ親しんでいない英語初心者の方ならその傾向はさらに顕著になります。また、ドラマの中で知らない単語や文法がたくさん使われていたとしても、同じように映像からおおよその意味を理解できてしまうため、内容についても「分かったつもり」になりやすいと言えます。


ここでリスニングのメカニズムについて説明します。
音声が聞こえたときにみなさんの脳の中ではSound Perception(音声認識)とComprehension(読解)という2つの処理が連続的に行われることになります。

① Sound Perception:聞こえた音声から単語を特定するステップ
② Comprehension:特定した単語の羅列から意味を理解するステップ


この2ステップそれぞれの処理能力は人によってバラつきがあります。
「Sound Perceptionは得意だけど、Comprehensionはちょっと苦手」というようなことです。そしてこの2つステップの存在こそが海外ドラマ視聴がリスニング力アップの学習としてうまく機能しない理由なのです。


多くの日本人がSound Perceptionで音声がキャッチできず、そのためComprehensionを正確に行うことができません。虫食いの英語字幕を見ながら意味を理解しようとするのを同じ状況で、これは難しいことですよね。


また、海外ドラマは多くの場合、速いテンポで展開していくため、Sound Perceptionの処理が追いつかず音声だけでは内容を理解できず、その結果冒頭で述べたように無意識に映像からの情報に依存してしまうのです。その結果、リスニングのプロセスが稼働せず、映像から意味を推測するといういびつなアクティビティーになってしまいます。


では、海外ドラマ視聴はまったく意味がないのでしょうか?

決してそんなことはないので安心してください。海外ドラマ視聴はComprehensionのトレーニングとしてはとても効果的に機能します。


そのために必要な条件は、以下の通りです。

・英語字幕を表示させる
・英語字幕を読めるスピードまで再生速度を落とす
・専門用語の少ないドラマを選ぶ

一般的にComprehensionのトレーニングとして推奨されているのは多読(読書)学習なのですが、海外ドラマ視聴時に上記の条件を揃えることで、映像付きの小説を読んでいるような環境を作り出すことができます。

動画配信サービスYouTubeやNetflixではデフォルトで速度調整機能が使えるため、上記のような視聴に重宝します。またインターネットブラウザ「Google Chrome」の拡張機能に「Video Speed Controller」というものがあり、ウェブサイト上にある動画コンテンツ対しても機能が有効なので多くの映画・ドラマ視聴時に活用できます。)

ということで、本を読むことが苦手な方は、海外ドラマ視聴を読書に置き換えてみましょう!


一方、Sound Perceptionの対策としては、シャドーイングというトレーニングをお勧めします。こちらはまた別のタイミングで詳しくお話しする予定ですので乞うご期待下さい。

参考:英語学習のメカニズム 第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法

※同じトピックについてお話しした動画もありますので是非ご視聴下さい。

Kenichi Ariga